抄録
平成22年の厚生労働省難治性膵疾患研究班の報告によれば,わが国における急性膵炎の診療に対してDPC対象病院では,赤字収支になることが報告された。とくに重症急性膵炎を受け入れている3次救命救急センターでは多くの医療資源を投入しての救命治療に比して,DPCでは赤字になりやすいことが指摘されていた。そこで,今回,急性膵炎の治療現況と重症度,出来高算定額,DPC算定額を比較することで,DPCによる急性膵炎の収益の実態を検討した。対象はコード病名が急性膵炎であった39例とした。厚生労働省重症度判定基準(2008)によって重症度を評価すると,軽症は31例(79.5%),重症は8例(20.5%)であった。収支が黒字であった症例は16例(41.0%)で,23例(59.0%)は赤字であった。赤字症例は,軽症31例中16例,重症8例中7例であった。平均在院日数別に収支を検討すると黒字例が11.8日であったのに対し,赤字例では22.7日と長い傾向にあった。黒字例の平均収支は29,954.3円の増収であった一方で,赤字例の平均収支は225,388.3円の損失であった。結果として,重症例で赤字になる可能性が高く,在院日数が長い方が赤字になりやすいことが分かった。また,赤字例では,手術や画像診断などに費用をかけていた。急性膵炎は,軽症と重症では病態や投入する医療資源も大きく異なるため,今後のDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)の変更が必要である。