2013 年 33 巻 3 号 p. 535-542
われわれは,各種病態において炎症性メディエーターとして注目されているHigh─mobility group box 1(HMGB1)に着目し,劇症肝不全に対する新治療の開発を試みている。劇症肝不全患者,薬剤誘導性ラット劇症肝不全モデルにおいて血漿中HMGB1,肝組織中HMGB1は健常群に比較してそれぞれ有意な上昇,低下を認めた。HMGB1に対する特異的中和抗体を薬剤誘導性ラット劇症肝不全モデルに投与したところ著明な病態改善効果を認めた。さらに,HMGB1の阻害剤であるBox Aタンパクの遺伝子導入,リコンビナントトロンボモジュリン投与,HMGB1吸着カラムを用いた体外循環などの有効性を大小の動物モデルで検証した。遺伝子導入,体外循環治療では一定の効果が認められつつあり,診療に役立つ劇症肝不全に対する新治療の開発が期待された。