2013 年 33 巻 3 号 p. 597-600
症例は72歳の男性で,下部胆管癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後第14病日に行った造影腹部CT検査にて,総肝動脈に仮性動脈瘤を認めた。造影剤の血管外への漏出はなく,血行動態も安定していたため未破裂の仮性動脈瘤と判断して,待機的に治療を行った。総肝動脈の塞栓による合併症を回避するため肝動脈の血流温存を第一に考えて治療法を選択し,冠動脈用ステントグラフトを総肝動脈に留置して仮性動脈瘤を閉塞した。ステント留置後約3ヵ月の腹部造影CT検査では左右肝動脈が描出され,肝臓実質の造影も良好であり,ステントの開存が確認できた。冠動脈用ステントグラフトを腹腔動脈領域に用いるのは保険適応外であるが,仮性動脈瘤の閉塞と臓器血流の温存を両立することができるため,門脈閉塞が認められる症例では動脈塞栓術に代わる非常に有用な治療法である。