2013 年 33 巻 3 号 p. 601-605
症例は60歳代男性。腹痛,発熱を認め当院受診し,腹部全体に圧痛,反跳痛,筋性防御を認めた。造影CTで腹水および腹腔内遊離ガス像がありS状結腸穿孔と診断。多数の肝腫瘍も認めS状結腸癌多発肝転移が疑われた。緊急手術が必要であったが,胸痛の既往と心電図,心臓超音波検査より不安定狭心症と診断され,まず冠動脈造影検査を行い,2病変に対し冠動脈形成術を行った。来院4時間後開腹手術を行い,S状結腸穿孔部に腫瘍を確認し,洗浄ドレナージ,人工肛門造設術を行った。術後ICU入室し11日目にICU退室,87日目に軽快退院した。大腸穿孔は死亡率が高く緊急手術の適応となるが,自験例は不安定狭心症に対しても緊急に治療が必要であった。今回,冠動脈形成術後開腹手術を施行し救命し得たため,文献的考察を加え報告する。