日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
肝硬変を合併した医原性食道破裂の1例
手島 仁
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2013 年 33 巻 3 号 p. 607-610

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抄録

近年,内視鏡診断・治療件数の増加により医原性の消化管穿孔の報告が増えてきている。なかでも食道穿孔は死亡率が高く,特発性食道破裂と同様に迅速かつ適切な診断・治療が必要である。今回われわれは肝硬変に伴う食道静脈瘤出血の止血操作時に医原性食道破裂をきたした1例を経験した。はじめ保存的加療を選択したが病状が悪化したため,発症から約12時間後に外科的治療を行った。穿孔部が大きく肝硬変を合併し縫合不全が高率に予想されたので穿孔部縫合閉鎖とTチューブ留置による外瘻化,腸瘻造設を行った。術後は縫合不全や膿瘍形成などを合併することなく第92病日に退院となった。早急な外科的治療,Tチューブによる外瘻化,経管栄養などにより良好な結果を得たと考えられた。肝硬変を合併した食道破裂はその死亡率・術後合併症の高さから外科的治療が躊躇されるが,全身状態が悪化する前に早期に手術を行うことが有用である可能性が示唆された。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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