2013 年 33 巻 3 号 p. 611-614
症例は70歳代,女性。発熱,腹痛を主訴に近医を受診し,精査にて上腸間膜静脈血栓症と診断され紹介となった。CT検査で回結腸静脈から始まり,脾静脈との合流部におよぶ広範囲な血栓を上腸間膜静脈に認めた。また,回盲部に浮腫性変化と腸管外ガス像を認め,同部位の消化管穿孔が疑われた。以上から,上腸間膜静脈血栓症および消化管穿孔と診断し,緊急手術を施行した。バウヒン弁から約3cm口側の回腸に腸間膜への穿通を認めた。回腸はほぼ全域において軽度の浮腫を認めたが色調は正常であった。空腸と結腸に異常は認めなかった。手術は回盲部切除,人工肛門造設術を行った。術後1日目よりヘパリンの持続静注を開始。12日目よりワルファリン内服に変更し,現在も抗凝固療法を継続中である。来院時の血液検査にてプロテインCおよびSの低下が認められた。プロテインCおよびS両者の欠乏を伴う上腸間膜静脈血栓はまれであったため報告する。