抄録
要旨:大腸内視鏡検査により,脾損傷をきたし脾摘出術を要した1例を経験した。症例は85歳男性。検診にて便潜血陽性であったため,近医にてミダゾラム,ペチジン塩酸塩での鎮静下に大腸内視鏡が施行された。挿入はスムーズで観察のみで終了した。検査終了30分後より左上腹部に疼痛が出現し血圧が低下しショック状態となったため当院へ転送となった。輸液および輸血で循環動態安定し,またCT上脾周囲に血腫,腹腔内出血を認めるも造影剤漏出なく,保存的加療の方針とした。その後状態安定するも第3病日に再度腹痛出現,出血性ショック状態となった。脾損傷の再出血によるものと判断し,脾動脈塞栓術を行ったものの静脈出血が主であったため止血が得られず動脈塞栓後に脾摘出術を施行した。術後経過は良好で第19病日に軽快退院となった。大腸内視鏡検査による脾損傷はまれではあるものの致死的経過をたどる可能性もあり留意すべきである。