抄録
要旨:出血を伴う十二指腸GISTで,術前にtranscatheter arterial embolization(以下,TAE)を施行することにより,安全に膵頭十二指腸切除術を施行し得た症例を経験したので報告する。症例は39歳女性。2003年他院で十二指腸GISTの核出術を施行。2010年6月から下血が出現した。上部消化管内視鏡では,Vater乳頭部の約2cm肛門側の粘膜下腫瘍から出血があり,エピネフリン入り高張食塩水の局所注入で止血を行った。6日後の上部消化管内視鏡で再出血があり,TAEによって止血した後,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。十二指腸のGISTは腫瘍が膵と一塊をなすものについては膵頭十二指腸切除の適応であるが出血を伴う場合には,内視鏡やTAEによって出血を十分に制御して手術を施行することが望ましいと考えられた。