2013 年 33 巻 6 号 p. 1019-1022
要旨:進行胃癌による幽門狭窄の経過中に食道破裂をきたした1例を経験した。症例は65歳男性で,貧血に対する精査目的に施行した上部消化管内視鏡検査で,胃幽門部にBorrmann3型腫瘍を認め,幽門狭窄の状態であった。精査加療目的に入院となったが,入院13日目に嘔吐し,以後腹痛が出現した。呼吸苦も出現したため,胸腹部造影CTを施行し,食道破裂による縦隔炎と診断して緊急手術を施行した。左開胸開腹連続斜切開により胃全摘,下部食道切除,縦隔ドレナージ術を行った。術後,縦隔の持続洗浄ドレナージを行い縦隔炎は改善したが,肝転移の進行により術後5ヵ月で死亡した。胃癌に伴った食道破裂の報告は少なく,本邦では自験例を含めて12例のみである。本症例では進行胃癌による幽門狭窄のために胃内が緊満し,嘔吐に伴う食道内圧の上昇により食道破裂をきたしたものと考えられた。