2013 年 33 巻 7 号 p. 1201-1205
要旨:症例は84歳,女性。発熱,心窩部痛,背部痛を発症し当院救急外来を受診した。血液検査では軽度貧血と白血球数の増加がみられ,腹部CTにて十二指腸上行脚の憩室と,その周囲の後腹膜気腫像を認めた。十二指腸上行脚憩室穿孔と診断し,緊急手術を施行した。開腹所見ではTreitz靱帯は炎症性に肥厚しており,同部位を切開すると後腹膜腔から膿汁が流出し,十二指腸上行脚に穿孔した憩室を認めた。憩室切除,縫合閉鎖,膿瘍腔のドレナージを施行した。病理組織学的に憩室は固有筋層を欠く仮性憩室であり,菲薄化した穿孔部周囲組織は壊死像を呈していた。術後経過は良好で術後24病日に退院した。十二指腸上行脚の憩室穿孔はまれであるが重篤な疾患であり,迅速で正確な診断の下に,早期に手術療法を行うことが重要である。