2013 年 33 巻 7 号 p. 1207-1211
要旨:症例は74歳,男性。直腸癌同時性肝転移術後4年目に残肝(S1)再発と同時性肺転移を認め,肝S1切除,下大静脈合併切除,横行結腸部分切除,右肺S5部分切除を施行した。術後に肺炎を契機とした呼吸不全・敗血症性ショックに陥り,持続血液濾過透析を施行した。カテコラミン不応性の血圧低下を認め,内分泌機能検査を施行し血中コルチゾールの相対的低値とACTH負荷試験においてコルチゾール分泌の反応低下を認め急性副腎不全と診断した。hydrocortisoneの投与後,循環動態の速やかな改善が認められた。急性副腎不全はコルチゾールの絶対的あるいは相対的欠乏によってもたらされる急性循環不全であり,治療が遅れると救命が困難となる。過大侵襲外科手術後の敗血症性ショック併発時にカテコラミン不応性の血圧低下を認めた場合は,急性副腎不全の存在も念頭に置くべきであると考えられた。