日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
遅発性に胆管損傷および十二指腸損傷をきたした腹部鈍的外傷の1例
佐川 弘之松尾 洋一溝口 公士坪井 謙森本 守宮井 博隆石黒 秀行木村 昌弘竹山 廣光
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2015 年 35 巻 1 号 p. 135-140

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抄録

症例は69歳,女性。交通事故による腹部鈍的外傷を受傷し,救急搬送された。来院時と受傷3時間後に施行した腹部CT検査で肝損傷(Ⅰb型)を認めた。受傷7日目になり後腹膜腔液体貯留を認め,DIC-CT検査と後腹膜腔穿刺ドレナージ所見により胆管損傷と診断した。さらに受傷20日目に十二指腸穿孔を発症し,緊急開腹術を施行した。胆管損傷は膵上縁部胆管に認めた。十二指腸損傷は下降脚から水平脚にかけて認め,Vater乳頭部にも及んでいたため(Ⅱa(D2~D3)RP,VP),膵頭十二指腸切除術を施行した。外傷性十二指腸損傷と外傷性胆管損傷は,腹部鈍的外傷のなかでも比較的頻度が低いとされているが,なかでも受傷7日目以降の穿孔例は極めてまれである。腹部鈍的外傷は,遅発性に臓器損傷を発症する可能性を十分に念頭においたうえで慎重に経過を追い,状況に応じて適切な対応をとる必要があると考えられた。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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