抄録
症例は96歳,女性。腹痛と嘔吐を主訴に前医を受診し,急性腹症を疑われ当院に搬送となった。既往として腸閉塞の手術歴を認めた。腹部所見では下腹部全体の膨隆と圧痛を認め,左下腹部に3cm大の弾性軟の腫瘤を触知した。血液検査所見では炎症反応の軽度上昇を認めた。腹部CT所見で小腸の捻転像とDouglas窩の腹水貯留を認め,絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した。腹腔内は癒着が高度で腹腔内全体の観察は困難であったが,S状結腸間膜に2cm大の異常裂孔が存在し,この裂孔に小腸が約30cmに渡り嵌入,絞扼されていたため,S状結腸間膜裂孔ヘルニアと診断した。壊死腸管を切除し,裂孔を閉鎖した。術後は誤嚥性肺炎を発症し術後46日目に永眠された。S状結腸間膜に関する内ヘルニアはまれで,術前診断は困難とされている。今回われわれは超高齢者に発症したS状結腸間膜裂孔ヘルニアを経験したため報告する。