抄録
症例は86歳の女性で糖尿病に対してα-グルコシダーゼ阻害剤(以下,α-GI)の投与を受けていた。意識障害を主訴に前医へ搬送され,腹部CTで消化管穿孔を疑われ当院に救急搬送となった。JCS-200,腹部は膨満で軟,腹膜刺激症状は意識障害により不明であった。血液・尿検査などから,高浸透圧性非ケトン性昏睡の状態であり,腹部CTで腹腔内遊離ガスを認めたことから消化管穿孔の疑いで試験開腹術を施行した。開腹したところ明らかな穿孔所見を認めず,小腸間膜の漿膜に気腫性変化を認めたため,気腹症を伴う腸管囊胞状気腫症と診断した。成因としてα-GIが関与した疑いがあったため,同薬剤の内服を中止し,高浸透圧性非ケトン性昏睡に対する治療を行い,術後第31病日に退院となった。本邦における気腹症を伴う腸管囊胞状気腫症にα-GIが関与した報告は本症例を含め15例と比較的まれであり,意識障害を主訴とした報告は認めない。