日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
誤嚥性肺炎改善後に腹腔鏡下逆流防止術を施行した高齢者Ⅲ型食道裂孔ヘルニアの1例
吉岡 将史野村 務松谷 毅萩原 信敏藤田 逸郎金沢 義一眞鍋 恵理子内田 英二
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2015 年 35 巻 3 号 p. 275-278

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抄録

症例は82歳,女性。逆流性食道炎のため内服加療中であった。逆流症状増悪,嗄声,咳嗽を自覚,当院受診。外来でショック状態となり集中治療室に入院した。誤嚥性肺炎による急性呼吸促迫症候群と診断され,呼吸器管理,昇圧剤,抗生剤投与などの加療を行った。約1週間で軽快,一般病棟へ転棟した。胸腹部CT,上部消化管造影,上部消化管内視鏡にてⅢ型食道裂孔ヘルニアを認め,それによる逆流が誤嚥性肺炎の原因と考えられたため,腹腔鏡下逆流防止術(Toupet法+メッシュによる食道裂孔補強)を施行した。術後経過は良好で,術後5日目に退院。入院期間は29日であった。本邦ではまだ腹腔鏡下逆流防止術は一般的ではないが,高齢者で重篤な誤嚥性肺炎を認めたⅢ型食道裂孔ヘルニア症例において,肺炎治療後すみやかに本手術を行うことは,逆流による肺炎の再燃を防ぐとともに早期の社会復帰を可能にする点で有用であると考えられた。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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