抄録
以上で世界の食糧事情の現況と将来をみたが, FAOがしばしばのべているように, 食糧生産の増加が人口増加にようやく追付いており, 進国では近年それがまた人口増加に追付かなくなってきつつあるようにみられる。1人当たりの消費増と質的な変化を考えるとこのとはもっとはなはだしくなる。
古くは1798年にマルサスが人口論をあらわし, 食糧生産は算術級数的に増加し, 人口は幾何級数的増加するといったが, それが再来したようにいわれてきている。しかし, いままで, 一方ではアメリカに尨大な余剰農業物があり, 他方では飢えたアジアがあったということは, あくまでも食糧の相対的な過剰や不足があったということを示すものであるすなわち後進国は外貨がないために食糧が買えなかったので, 主としてアメリカの余剰農産物の援助計画で, 不足を補填していたが, それでもなお十分な1人当たり供給ができなかったのである。他方それでもなお余剰農産物がアメリカでは集積していったのである。しかし, 最近のように, アメリカの余剰農産物が減少してくると問題はまた変わってくるであろう。なお, アメリカには潜在的な生産力まだ多くあるという展開点はそに残されている。
いずれにせよ後進国で人口増加率が高いことは食糧生産の成長率のみならず, 国民経済一般の成長率がたとえ高くとも, 大きな人口増よってその成長率が吸収されてしまい1人当たりの食糧生産や所得は低いものになってしまう。
リオデジャネイロのブラジル大の栄養研究所長をしていたジョーズエ・デ・カストロ教授は, 1952年に「飢えの地理学」という本を書いており, その中で動物性蛋白摂取量の少ない国は出生率が高く, 摂取量の多い国は低いということを統計的に算出している。これは1950年頃の統計とみられるが, のことから, 同教授は貧困な国では澱粉質食糧の消費比率が高くこれが多産の原因となっているのだと述べ, このことから, 人口が多いから後進国は貧困なのではな, 貧困で澱粉質食糧を多く摂取する (すなわち動物蛋白の消費が少ない) から子供が多くなるのだと述べている。これが正しいか否か筆者には判断できないが, 最近の数字に置きかえてこれをみると, ほぼ1963年に, インドでは動物蛋白を1人1日当たり5.9グラムしか消しないが, 出生率は1, 000人に付き20.9人である。日本は同様な数字が16.9グラムの動物蛋白で出生率は1, 000人につきわずかに17.3人である。一方オーストラリアでは動物蛋白を1人1日60グラム摂取するが出生率は1, 000につき21.6人である。
カストロ教授の計算した1950年頃の数字では日本は動物蛋白摂取量1人1日わずかに9.6グラムで, 出生率1, 000人につき27人であった。そしてオーストラリアでは現在と同様60グラムで人口1, 000人当たり出生数は18人であった。
このうな変化はカストロの説にして正しければ日本の動物質蛋白摂取量が多くなったことにもよるが, 日本の家族計画の普及ということもよるのであろう。このようにみると, 困難なことではあるが, 後進国では今後家族計画の問題は必要となってくるであろう。インド中共ではこのことが広く研究されているようである。
しかし家族計画はあくまでも貧困だから子供が持てないということでな, 計画的に将来の家族員数をふやすということであるべきと考えられる。