抄録
症例は64歳,女性。軽自動車運転中の単独事故で腹部を打撲し,当院救急搬送となった。腹部造影CTで膵頭部領域に血腫および造影剤の血管外漏出を認め,shock vitalであったため緊急手術を施行した。開腹すると多量の血性腹水を認めた。十二指腸および上行結腸を授動すると十二指腸水平脚周囲に血腫を認めた。膵下縁で大量の出血を認めており,門脈本幹に裂傷が認められた。この門脈裂傷を縫合閉鎖したが,門脈が狭小化してしまい門脈血流の維持は困難と考えられたため,門脈を結紮切離した。術後経過は良好で,術後第36病日目に退院となった。腹部外傷における門脈損傷はまれであるが,高い死亡率が報告されており,死亡率を低下させるため,早期に出血コントロールすることの重要性が述べられている。今回われわれは外傷性門脈損傷に対し,門脈結紮術を施行することで早期に出血をコントロールし,救命した1例を経験したので報告する。