日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
下行結腸穿孔を契機に診断された血管型Ehlers-Danlos syndromeの1例
安藤 知史愛甲 聡前田 真悟大平 正典
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2015 年 35 巻 7 号 p. 939-943

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抄録

症例は18歳の男性。排便中の突然の左下腹部痛を認め当院に救急搬送となり,下行結腸の虚血性腸炎の診断で入院となった。入院後に症状・所見の増悪を認め再度施行したCTで下行結腸穿孔と診断され緊急手術となった。結腸穿孔部縫合閉鎖,横行結腸人工肛門造設術を施行したが,憩室や腫瘍などの併存する原因疾患は認めず,また用指把持により小腸漿膜が容易に剥離する所見を認め,Ehlers-Danlos syndrome(EDS)を疑った。遺伝子検査を行い血管型EDSと診断された。7ヵ月後に危険性について説明の上,人工肛門閉鎖術を施行したが,術後麻痺性の大腸イレウスから上行結腸壊死・穿孔をきたし再手術となった。術後正中創哆開や小腸瘻,ループ式人工肛門の断裂などのEDSに関連した合併症を認めたものの社会復帰に至った。若年者の原因不明の消化管穿孔で病歴や所見からEDSの関与の可能性が疑われる場合には,人工肛門閉鎖には極めて慎重な姿勢で臨む必要がある。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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