2016 年 36 巻 5 号 p. 963-967
症例は75歳の女性で,食後に出現した間欠的な腹痛を主訴に当院を受診した。既往歴は特になく,腹部手術歴も認めない。腹部造影CT検査で横行結腸背側,十二指腸下行部の腹側に小腸の嵌入を認め,内ヘルニアの診断で緊急手術を施行した。手術所見では,横行結腸間膜裂孔をヘルニア門とする内ヘルニアであり,嵌頓した小腸を用手的に整復した。嵌頓腸管に壊死は認められず,ヘルニア門を縫合閉鎖し手術を終了した。術後の経過は良好で,第8病日に退院した。内ヘルニアのなかでも横行結腸間膜裂孔ヘルニアは比較的まれな疾患であるため,文献的考察を加えて報告する。