2016 年 36 巻 6 号 p. 1085-1088
症例は90歳女性。S状結腸癌,多発肝転移疑いで当院紹介受診。下部消化管内視鏡でS状結腸に全周性の2型進行大腸癌を認めた。scopeは通過不能であり,CTで多発肝転移を認めたため緩和目的に大腸ステント(WallflexTM metallic stent 22mm×9mm)を挿入。挿入後3日目に嘔気と腹痛出現。CTで腹腔内にfree airと腹水を認め,消化管穿孔を疑い緊急手術施行。術中所見では口側,肛門側ともにステント端で腸管壁が菲薄化し穿孔していた。S状結腸の癌腫は小腸間膜に浸潤固着し弯曲していたため,ステントが拡張する際のaxial force(屈曲した腸管を直線化する力)によりステント端が腸管に先あたりして穿孔したと考えられた。他臓器浸潤による腸管の弯曲と可動性低下は,ステント留置後に遅発性穿孔をきたすリスクと考えられ,留置の際にはこの可能性を念頭に置く必要があると考えられた。