2017 年 37 巻 3 号 p. 515-519
症例は64歳,男性。下痢・経口摂取量低下で救急外来を受診した。来院時発熱あり,会陰・鼠径部を中心に皮膚に高度の発赤・握雪感を認め,ショックの状態であった。CTで右大腿~体幹部の軟部組織に広範な気腫像を認め,フルニエ壊疽による敗血症性ショックと診断した。ただちに皮下感染巣を切開排膿し,抗菌薬・昇圧剤投与などの集中治療を開始した。来院時のCT上,直腸に不整な壁肥厚像を認めたため,colon fiber(CF)を施行したところ全周性の2型腫瘍を認め,生検で直腸癌と診断した。フルニエ壊疽,敗血症は改善し,待機的に腹会陰式直腸切断術を施行した。直腸癌がフルニエ壊疽を契機に発見されることはまれである。若干の文献学的考察を加え報告する。