2017 年 37 巻 4 号 p. 543-548
大網裂孔ヘルニアは大網の異常裂孔に腸管が嵌入して起こる比較的まれな内ヘルニアの1つで,特徴的な臨床所見に乏しく術前診断は困難とされてきた。2009年から2016年の間に当科で術前診断にMD-CTが有用であった10例の大網裂孔ヘルニアを経験した。年齢は58~83歳(平均67歳)で,男性6人,女性4人であった。MD-CTによる術前診断は大網裂孔ヘルニアが6例,内ヘルニアが4例であった。MD-CTの画像上の特徴として,ヘルニア門から脱出する上行結腸や横行結腸の腹側に位置する拡張した小腸,closed-loop,腸間膜や小腸の収束像が有用な所見であった。開腹歴のないイレウス例では大網裂孔ヘルニアを念頭に置く必要がある。MPRを用いたMD-CT検査が有用であり,術前に大網裂孔ヘルニアを診断できる可能性がある。