2017 年 37 巻 4 号 p. 607-610
内ヘルニアは腸閉塞の原因の約10%を占めるといわれており,そのうち子宮広間膜ヘルニアの頻度は低く,まれな疾患である。特異的な臨床所見に乏しく,術前に確定診断をつけるのは困難といわれていたが,近年の画像診断の進歩に伴い,術前診断しえた症例の報告が増加している。当院では,2010年から2016年の間にCTで術前診断しえた子宮広間膜ヘルニアを5例経験した。全例腹痛を主訴に来院し,精査のCTで拡張した小腸ループをDouglas窩に認め,それに子宮が圧排され偏位していた。拡張した腸管壁は造影効果を認め,腸管壊死の可能性は低いと判断した。子宮広間膜ヘルニアの診断で手術が施行され,そのうち3例は腹腔鏡で完遂した。腸管壊死はなく全例腸管を温存できた。術後経過は良好で,子宮広間膜ヘルニアの診断にはCTが有用であること,また,腹腔鏡手術が治療選択肢の1つとなりうることが考えられた。