2017 年 37 巻 5 号 p. 803-807
症例は68歳,男性。自殺目的に家庭用アルカリ性洗剤を約200mL服用し,直後より嘔吐と心窩部痛を認め救急搬送となった。服用後10時間で気道狭窄症状が出現し気管切開術を行った。同日1回目の上部消化管内視鏡検査(以下,EGD)を行い,食道の潰瘍および胃前庭部の全周性潰瘍を認め障害度Ⅲ度と判断した。第7病日のEGDで下部食道亜全周性びらん,胃前庭部潰瘍による壁変形を認め瘢痕狭窄のハイリスクと判断しステロイドとトラニラストの内服を開始した。第17病日のEGDで食道びらん・胃前庭部変形の改善を認めた。経口摂取開始後は消化器症状なく経過し第22病日に退院となった。腐食性食道炎・胃炎による消化管障害は,服用薬物の種類,濃度,量によって種々の病態を呈する。誤飲後早期に障害程度を把握し,狭窄のリスクが高いと判断した場合はステロイドとトラニラストの予防内服を考慮する必要がある。