日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
37 巻 , 5 号
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原著
  • 小林 照宗, 田中 元, 佐藤 やよい, 丸山 尚嗣, 水本 英明
    2017 年 37 巻 5 号 p. 687-693
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    当院における上部消化管異物の特徴を明らかにし,予防,検査,治療について一定の指針を示すことを目的とした。対象は内視鏡的摘除を行った105例。種類,部位,年齢,性別,基礎疾患,内服,喫煙・飲酒習慣,症状,発生と受診の曜日,受診と内視鏡検査までの時間,画像,処置具,除去率,入院の有無・合併症について検討を行った。種類はPress through package (PTP) 32例,食物残渣(食残)27例,アニサキス14例,義歯14例,魚骨8例,その他10例。部位は食道71例,胃31例,十二指腸3例。平均年齢64.5歳。PTPは高齢者で多いが45歳以下にもみられた。消化管狭窄は20例みられた。CT検査は描出率が高く有用であった。内視鏡的摘除率は93.3%と高かったが,有鉤義歯2例が手術となった。鋭的異物では部位や穿孔の確認にCT検査が不可欠であり,処置では消化管損傷予防にフード装着が必要である。

特集:腹部救急領域における敗血症性DICの治療戦略
  • 真弓 俊彦, 富田 章仁, 馬庭 幸詩, 宇津 朋生, 伊藤 誉人, 新里 到, 眞田 彩華, 谷口 一成, 花石 源太郎, 弓指 恵一, ...
    2017 年 37 巻 5 号 p. 697-702
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    敗血症では,DICを合併すると予後不良であることが報告されている。敗血症性DICではAT活性が低下し,その値,例えば50%未満の場合には予後不良などと,重症度の指標となるという報告が多数なされている。また,AT製剤投与後のAT活性値が15%以上上昇した場合には予後が良好であることも報告されている。このように,AT活性値や,AT投与後のAT活性値の変化は予後予測の指標となる。これらを踏まえて,AT活性値を指標とした感染性DICの診療方針を示した。「急性期DIC診断基準」でDICと診断したら,AT活性値を測定し,50%未満であれば重症であり,また,AT製剤やTM製剤投与翌日のAT活性値を測定し,その上昇が15%未満に止まる場合も重症である。これらの重症例ではAT製剤とTM製剤などの併用療法が,軽症例ではいずれかの単剤投与が望ましいと考えている。

  • 宮下 知治, 櫻井 健太郎, 野村 皓三, 東野 信之介, 太田 哲生
    2017 年 37 巻 5 号 p. 703-710
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    敗血症性臓器障害に至る過程はPhase Ⅰ~Ⅲに分類できる。Phase Ⅰはおもに肝や肺において,血管内活性化血小板との相互作用により活性化された好中球のNeutrophil extracellular traps(以下,NETs)によって惹起される。Phase Ⅱは過剰なNETs由来のdamage-associated molecular patterns(DAMPs)によって血管内皮細胞が剥離・脱落し,血小板が血管外へと逸脱する。Phase Ⅲは逸脱した血管外血小板が肝ではDisse腔,肺では肺胞壁で凝集し,血管外血小板由来因子によって門脈圧亢進症や肺高血圧症が,さらに肝の線維化や肺線維症が惹起され,肝・肺のveno-occlusive disease(VOD)が誘導される。また血管外血小板由来因子は線溶抑制型の凝固・線溶異常,さらに免疫麻痺状態を誘導し,不可逆的かつ致死的な多臓器障害へと進行する。そのためバンドル治療による早期介入を行うことが重要であると考えられる。

  • 岡本 好司, 山吉 隆友, 野口 純也, 上原 智仁, 野々村 遼, 田上 貴之, 森口 智江, 新山 新, 木戸川 秀生, 田口 健藏, ...
    2017 年 37 巻 5 号 p. 711-716
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    腹部救急領域では,敗血症性DICに遭遇することが多い。基礎疾患の適切な治療と敗血症性DICの適切なコントロールが,予後を改善する。診療に際しては,敗血症性DICの病態に精通し,早期にかつ正確な診断を下すことが肝要である。敗血症性DICの病態で,重要なことは炎症と凝固の連関であり,HMGB1をはじめとするDAMPsの関与も理解すべきである。敗血症性DICの診断には,急性期DIC診断基準を用いるのがよい。近年,さらに鋭敏度と特異度を改善した日本血栓止血学会DIC診断基準2017が発表された。今後,本診断基準の腹部救急領域における使用頻度が高まり,敗血症性DICの治療成績がますます向上することが望まれる。

  • 片山 真史, 瀬上 航平, 星野 博之, 小林 慎二郎, 小泉 哲, 大坪 毅人
    2017 年 37 巻 5 号 p. 717-722
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    遺伝子組み換え型ヒト可溶性トロンボモジュリン(以下,rhTM)は播種性血管内凝固症候群(以下,DIC)治療のkey drugとして注目されているが,現時点では死亡率の改善を示すエビデンスは存在しない。われわれは敗血症性DIC症例を,rhTM投与36例(rhTM群)と非投与34例(non―rhTM群)で後方視的に比較検討した。背景因子,SIRSスコア,SOFAスコア,DICスコア,凝固能の推移,DIC離脱率とDIC離脱日数,生存率について検討した。治療開始時の背景因子と各スコアには有意差はなく,7日目のDICスコア,血小板数,FDP値では両群間に有意差を認めた(P<0.001,P=0.035,P=0.013)。DIC離脱日数はrhTM群で有意に短期間であったが,離脱率と生存率には有意差は認めなかった。rhTMは敗血症性DIC治療において,DIC罹患期間の短縮に寄与することが示唆された。

  • 北村 勝哉, 山宮 知, 石井 優, 三井 佑太, 野本 朋宏, 吉田 仁
    2017 年 37 巻 5 号 p. 723-727
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    重症急性膵炎(severe acute pancreatitis:以下,SAP)は,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:以下,DIC)を合併する疾患の1つである。近年,DIC治療薬として遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリン(リコンビナントトロンボモジュリン製剤;recombinant human soluble thrombomodulin:以下,rTM)が本邦において開発され,臨床応用されている。当施設におけるDIC合併SAP患者の臨床成績とrTMによる治療成績を検討した。SAP患者の約50%にDICを合併した。DIC合併SAP患者の90%以上に臓器障害を合併し,被包化壊死を約40%に認めた。rTMによるDICの離脱効果が示唆されたが,有効性と安全性を評価するためには,更なる質の高い研究が望まれる。

症例報告
  • 桒田 亜希, 平野 利典, 内藤 浩之, 海気 勇気
    2017 年 37 巻 5 号 p. 729-733
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    患者は83歳の男性で,胸痛を主訴に当院に救急搬送された。急性心筋梗塞による心原性ショックと診断され,心臓カテーテル治療を行い,抗凝固治療が開始となった。心臓カテーテル治療後第8日目に右季肋部痛が出現し,急性胆囊炎と診断した。保存的治療を行ったが心臓カテーテル治療後第11日目に血圧低下をきたし,高度炎症を認めた。CTで胆囊内および周囲に高吸収域を認め,出血性胆囊炎および穿孔と診断し,緊急手術を施行した。手術所見で胆囊周囲に血腫,胆囊体部に穿孔を認め,胆囊摘出術を行った。術後2日目に抗凝固療法を再開し術後23日目に退院となった。出血性胆囊炎は早期診断および治療にあたることが重要である。とくに抗凝固療法施行中の場合,出血のリスクが高く,適切な治療の選択が求められる。

  • 高村 卓志, 草塩 公彦, 松本 正成, 鈴木 大, 伊良部 真一郎, 宇田川 郁夫
    2017 年 37 巻 5 号 p. 735-738
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    小腸間膜リンパ管腫は比較的まれな疾患であり,術前診断に難渋することが多いが,急性腹症を認める症例もあり注意が必要である。症例は15歳,女性。朝心窩部痛を自覚し,腹痛が増悪したため当院救急外来を受診した。臍部に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった。採血では白血球8,500/μL,CRP 0.04mg/dLと炎症所見は認めなかった。造影CTで骨盤内にSMA分枝より栄養され造影効果に乏しい腫瘍を認め,壊死腸管を疑った。小腸捻転と判断し同日緊急手術を行った。腹腔鏡で観察すると回腸末端より約110cm部に多房性で弾性軟の腫瘤を認め,腫瘤は骨盤底に落ちて回腸を巻き込み捻転している状態であり小腸部分切除・吻合を行った。病理組織検査でリンパ管腫の診断であった。捻転を契機とした急性腹症で発症し腹腔鏡下に治療を完遂した症例を経験したため報告する。

  • 樋口 格, 中村 隆俊, 佐藤 武郎, 内藤 正規, 山梨 高広, 渡邊 昌彦
    2017 年 37 巻 5 号 p. 739-742
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性。腹痛を主訴に来院した。腹部所見では左下腹部に限局する圧痛を認めた。腹部造影CTで左下腹部に不整な小腸壁肥厚と腸管外遊離ガス像を認めた。消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。Treitz靭帯から約90cmの空腸に穿孔部を認めた。同部位を含めて約30cmの小腸部分切除術を施行した。切除標本では,中心に潰瘍を伴う6×3.5cmの隆起性病変を認めた。病理組織学的検査では,小腸全層にわたる中型類円形の異型細胞のびまん性増殖を認め,腫瘍辺縁部にはintraepithelial lymphocyteを散見した。免疫染色の結果では,CD3,CD8,CD56,TIA-1,granzymeBが陽性であったためⅡ型腸管症型T細胞リンパ腫と診断した。術後経過は良好で,術後9日目に退院となった。空腸原発のⅡ型腸管症型T細胞リンパ腫が穿孔したまれな1症例を経験したので報告する。

  • 筒井 麻衣, 掛札 敏裕, 和多田 晋, 相浦 浩一
    2017 年 37 巻 5 号 p. 743-746
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は64歳,男性。6ヵ月前からの臍部の腫脹と2日前からの発熱,腹痛を主訴に受診した。CTでは腹壁内に周囲に膿瘍形成を伴う高吸収の異物を認め,形態から魚骨が疑われた。重症の併存症が多く,待機的手術を予定するも炎症の遷延を認め,入院4日目に膿瘍腔壊死組織のデブリードマンと魚骨摘出を行った。膿瘍腔は腹腔内と交通し,腹腔内を検索したところ,回腸末端から150cmに発赤,硬結を認め,穿通箇所と考えられた。経過良好で術後14日目に退院となったが,改めての詳細な病歴聴取により,臍部腫脹を自覚する前にカレイの摂食歴が明らかとなった。誤飲された魚骨が回腸を経由し,無症状のうちに腹腔内へ迷入した可能性が示唆された。外科手術が有効であったが,誤飲された異物には無症状で経過し,後に合併症を引き起こす場合もあり,術前のCTによる質的評価,診断の手がかりとなる詳細な病歴聴取が有用であると考えられた。

  • 小嶌 慶太, 中村 隆俊, 大部 誠, 三富 弘之, 佐藤 武郎, 渡邊 昌彦
    2017 年 37 巻 5 号 p. 747-750
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    虚血性小腸炎は比較的まれな疾患である。今回,微小変化型ネフローゼ症候群の治療中に発症した多発性虚血性小腸狭窄の1例を経験したので報告する。症例は67歳,男性。7ヵ月前に腹痛を認め,小腸炎の診断で経過観察をされていたが,繰り返す腹痛のため精査加療目的に当院受診した。症状は右下腹部痛のみで,腹部X線検査,CT検査で小腸閉塞症を認めた。イレウス管造影では小腸に3ヵ所の狭窄所見を認めた。小腸内視鏡では3ヵ所の潰瘍を伴う狭窄を認め,口側2ヵ所には拡張術を施行したが,肛門側1ヵ所は拡張困難であった。内科的治療抵抗性のため外科依頼となり腹腔鏡下手術を施行した。終末回腸から口側約150cmの距離に狭窄部位を認め,小腸部分切除を施行した。摘出検体は3ヵ所の全周性潰瘍および帯状の瘢痕狭窄を認め,病理組織学的検査では粘膜下層への炎症細胞浸潤と,粘膜固有層以深の線維化を認め虚血性小腸狭窄と診断した。

  • 宇野 泰朗, 真田 祥太朗, 西 鉄生, 福岡 伴樹
    2017 年 37 巻 5 号 p. 751-754
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は15歳男性,5日前からの間欠的腹痛を主訴に受診。腹部CT検査で小腸の重積を認め,先進部に壁が造影される管腔を認めMeckel憩室が疑われた。イレウス症状はなく,入院2日目に単孔式腹腔鏡手術を施行した。回腸に20cmほどにわたる重積を認め,整復すると回腸末端より100cmの場所に内翻する5cm大の憩室を確認し,内翻を整復して憩室切除を施行した。病理学的検査では胃底腺組織が認められ,Meckel憩室に矛盾しない所見であった。思春期以降の成人ではMeckel憩室が原因の腸重積症は比較的まれな疾患であるが,念頭に置く必要があると思われる。

  • 山川 純一, 宮崎 敬太
    2017 年 37 巻 5 号 p. 755-758
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性。既往に脳梗塞,虫垂炎,直腸癌がありアスピリンを内服している。夜間排便後からの左腰背部痛を主訴に外来受診した。検査の結果,日本外傷学会臓器損傷分類Ⅲb型の脾臓破裂と診断,緊急手術を行った。術中所見では脾臓被膜および実質の破裂と破裂箇所からの出血を認め脾臓摘出術を行った。術後経過は良好で術後6日目に退院となった。その後精査を行ったが脾臓破裂の原因となる基礎疾患は認められず,摘出した脾臓にも異常所見を認めなかったことから,抗血小板薬内服中の強い努責を契機に発症した特発性脾臓破裂と診断した。特発性脾臓破裂はまれな病態であるが,抗血小板療法や強い腹圧を契機に生じうることは念頭におく必要があると考えられた。

  • 太田 裕之, 園田 寛道, 清水 智治, 植木 智之, 三宅 亨, 目片 英治, 谷 眞至
    2017 年 37 巻 5 号 p. 759-761
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    患者は77歳,男性。横行結腸癌に対してEMR施行後の追加切除を目的として腹腔鏡下横行結腸部分切除術を施行した。術後4日目に抗凝固薬の副作用と考えられる下血を認めたが,その他に合併症は認めず術後11日目に退院した。退院翌日の術後12日目に突然の心窩部痛,嘔吐が出現し救急搬送された。造影CTにおいて脾動脈の末梢分岐から造影剤の血管外漏出を認め腹腔内出血による出血性ショックと診断した。ただちに腹部血管造影を行い,破裂動脈瘤に対してシアノアクリレートによる動脈塞栓術を施行して止血を得た。動脈塞栓術後の経過は良好で,術後3年を経過して再出血や動脈瘤の再発は認めていない。これまでに医学中央雑誌で検索した限りで腹腔鏡下結腸切除術後に遅発性の仮性動脈瘤破裂により腹腔内出血をきたした報告はなく,本症例は極めてまれであり教訓とすべき症例であると考えられた。

  • 崔 尚仁, 平松 聖史, 関 崇, 鈴木 優美, 牛田 雄太, 尾崎 友理
    2017 年 37 巻 5 号 p. 763-767
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    敗血症性ショックと播種性血管内凝固症候群(DIC)をきたした非穿孔性虫垂炎を報告する。症例は,76歳,男性。腹痛を訴え当院を受診,腸炎の診断で内服薬で一旦帰宅したが,翌日意識障害が出現し,救急車で当院へ搬入された。腹膜刺激徴候は認めなかったが,敗血症性ショックを呈していた。CTで腫大した虫垂を認め,急性虫垂炎と診断した。腹水貯留,膿瘍形成なく,穿孔を示唆する所見を認めなかったため,抗生剤投与による保存的治療を開始した。しかし,翌日DICとなり,改善が得られなかった。さらに翌日のCTでは虫垂炎の悪化を示唆する所見を認めなかったが,DICが進行していたため虫垂切除術を施行した。術後,DICと敗血症性ショックはすみやかに改善した。病理組織学的に壊疽性虫垂炎と診断したが穿孔は認めなかった。

  • 岡部 康之, 当間 雄之
    2017 年 37 巻 5 号 p. 769-772
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    患者は52歳男性。腹痛で近医を受診し一過性にショック状態となり当院へ搬送。腹部造影CTで多量の腹腔内出血と副中結腸動脈に8mm大の仮性動脈瘤を認め,出血源と判断した。緊急腹部血管造影を行い,副中結腸動脈に分節状の血管拡張および狭窄像を認めsegmental arterial mediolysisと診断した。病変が長く辺縁動脈に及ぶため血管塞栓術ではなく緊急手術とした。開腹すると術前診断通り結腸間膜や後腹膜に血腫が形成されていた。異常血管を間膜ごと切除するために結腸癌手術に準じた手術を行ったが血腫の存在は剥離層の認識にむしろ有利に働いた。病理組織学的検査では動脈中膜の融解を分節状に認めた。術前の画像診断を活かし病変を確実に切除し得た1例を報告する。

  • 山内 卓, 民上 真也, 榎本 武治, 松下 恒久, 福永 哲, 大坪 毅人
    2017 年 37 巻 5 号 p. 773-778
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は61歳,男性。食道胃接合部癌に対し胸腔鏡下中下部食道切除,開腹胃全摘術,D2+No16a2lat,中下縦隔郭清,後縦隔経路,胸腔内吻合,Roux─en─Y再建術を施行した。病理診断はEG,3型,75×45mm,tub1,T2N2M1 (LYM):StageⅣであった。再発徴候なく経過観察中の術後2年3ヵ月に左肩痛,心窩部痛で外来受診となった。胸腹部造影CT検査で横隔膜ヘルニア嵌頓による絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を施行した。手術所見では食道裂孔左側に1横指程度のヘルニア門を認め,小腸が約50cmにわたり胸腔内に嵌頓していた。嵌頓小腸を腹腔内へ還納,小腸部分切除を行ったのち,食道裂孔を非吸収糸で縫合しヘルニア門を縫縮,挙上空腸と横隔膜脚を縫合固定した。術後2年1ヵ月の時点で再発を認めていない。食道胃接合部癌術後2年3ヵ月と晩期発症の横隔膜ヘルニアはまれであり,文献的考察を加え報告する。

  • 佐藤 健太郎, 梅村 孝太郎, 長谷部 達也, 山田 恭吾, 松浦 修, 橋爪 正
    2017 年 37 巻 5 号 p. 779-782
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    術後の病勢コントロールに難渋した腸管ベーチェット病に低用量ステロイド投与が著効した1例を経験した。症例は24歳女性,消化管穿孔の診断で緊急手術となり,盲腸に打ち抜き様潰瘍の穿孔を認め,回盲部切除術を行った。術後に発熱,炎症反応高値の遷延,下血を認め,問診,身体診察と切除標本所見から腸管ベーチェット病と診断し低用量ステロイド(ヒドロコルチゾン100mg/日,プレドニゾロン換算で25mg/日)を投与したところ症状,採血データとも著明に改善した。腸管ベーチェット病の寛解導入にはステロイドが使用されるが,穿孔で発症した症例では腹腔内感染の増悪の危険性があるため,ステロイド投与の判断は難しい。投与量に関しては明確なコンセンサスは得られていないが,自験例のように低用量でも著明な効果を示す場合があり,穿孔例では感染増悪のリスクを軽減するために,低用量からのステロイド投与開始を検討する価値がある。

  • 富田 剛治
    2017 年 37 巻 5 号 p. 783-788
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は89歳,女性。嘔吐し倒れているところを長男に発見されて救急搬送された。腹部CTで右閉鎖孔内への小腸の脱出と口側小腸から胃にかけての拡張を認めた。誤嚥性肺炎を伴った閉鎖孔ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断した。イレウス管を挿入し,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に嵌頓した小腸を整復し,鼠径ヘルニアに対する腹腔内到達法に準じ,筋恥骨孔(myopectineal orifice:MPO)を剥離露出し,既成の形状記憶のものとシートタイプのメッシュをあわせて挿入固定した。近年では緊急例での腹腔鏡下手術も複数報告されており,腸管拡張を伴うイレウス症例であっても,減圧,術式選択,鉗子操作など,若干の工夫で十分に対応可能であると考えられる。腹腔鏡下手術(transabdominal pre-peritoneal repair:TAPP)が第一選択となる可能性が示唆された。

  • 小山 太一
    2017 年 37 巻 5 号 p. 789-792
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は75歳女性,右下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部CT検査において盲腸から横行結腸にかけて腸管壁の造影効果が低下した壁肥厚を認めた。腸管壊死を伴う急性虚血性大腸炎と診断し緊急手術を行った。術中所見では盲腸から横行結腸脾弯曲部にかけて暗赤色の色調変化を認め虚血性変化と判断し結腸亜全摘術を施行した。病理組織結果では静脈壁に石灰化と粘膜固有層から粘膜下層の間質に膠原線維性沈着がみられ特発性腸間膜静脈硬化症と診断された。

  • 室谷 研, 星野 弘毅, 岩﨑 茂
    2017 年 37 巻 5 号 p. 793-797
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性。黄染で近医を受診し,超音波検査で肝内胆管の拡張を認め当院紹介。CT検査で下部胆管狭窄を認め,内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブを留置し減横処置を行った。下部胆管癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行し,child変法で再建した。術翌日に著明な肝逸脱酵素の上昇を認め,CT検査で肝臓の広範な造影不領域を認め肝梗塞と診断した。抗凝固療法,PGE1製剤投与などの治療を開始したが肝逸脱酵素はさらに増悪したため血漿交換を行った。血漿交換後は肝機能の改善がみられたため保存的加療を継続し,肝不全や肝膿瘍などを併発せず軽快した。肝臓は,肝動脈と門脈から二重血流支配を受けており,梗塞を起こしにくい臓器である。しかし,一旦肝梗塞をきたした場合には致命的な経過をたどることもあり,肝梗塞の原因を予測し回避することは重要である。本症例の経過および過去の報告例による検討を含め報告する。

  • 中川 悠樹, 木下 弘壽, 新庄 貴文
    2017 年 37 巻 5 号 p. 799-801
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代男性。鼠径ヘルニア嵌頓の手術適応として他院より当院へ救急搬送された。当施設でも用手還納はできなかった。しかし,数分間の陰囊挙上によって自然に整復された。整復30分後に意識レベルがGCS E3V4M6に低下し,血圧75/57mmHg(橈骨動脈微弱),脈拍90/minとショック状態に陥った。細胞外液1,000mLの投与によりショック状態から離脱できた。直後に施行した腹部造影CTで腸間膜静脈損傷によると考えられる腸間膜血腫を認めた。バイタルサインが安定していたため,緊急手術を要しないと判断し,保存療法とした。入院10日目に局所麻酔下に鼠径ヘルニア根治術を施行した。合併症なく経過し,術後10日目に退院となった。救急外来でしばしば遭遇する鼠径ヘルニア嵌頓を整復する際は,用手還納後に腸間膜静脈損傷による腸間膜血腫を形成し,それに起因した循環血液量減少性ショックに至ることがあると認識すべきである。

  • 本間 祐子, 田中 公章, 徳丸 哲平, 村田 厚夫
    2017 年 37 巻 5 号 p. 803-807
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性。自殺目的に家庭用アルカリ性洗剤を約200mL服用し,直後より嘔吐と心窩部痛を認め救急搬送となった。服用後10時間で気道狭窄症状が出現し気管切開術を行った。同日1回目の上部消化管内視鏡検査(以下,EGD)を行い,食道の潰瘍および胃前庭部の全周性潰瘍を認め障害度Ⅲ度と判断した。第7病日のEGDで下部食道亜全周性びらん,胃前庭部潰瘍による壁変形を認め瘢痕狭窄のハイリスクと判断しステロイドとトラニラストの内服を開始した。第17病日のEGDで食道びらん・胃前庭部変形の改善を認めた。経口摂取開始後は消化器症状なく経過し第22病日に退院となった。腐食性食道炎・胃炎による消化管障害は,服用薬物の種類,濃度,量によって種々の病態を呈する。誤飲後早期に障害程度を把握し,狭窄のリスクが高いと判断した場合はステロイドとトラニラストの予防内服を考慮する必要がある。

  • 内田 史武, 黨 和夫, 荒井 淳一, 高木 克典, 國崎 真己, 阿保 貴章, 日高 重和, 七島 篤志, 澤井 照光, 永安 武
    2017 年 37 巻 5 号 p. 809-812
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例1は65歳の男性,統合失調症のため外来通院中であった。自ら左腹部を包丁で刺し,約1日経過した後救急搬送された。来院時刺創部から大量の腸管の脱出を認めた。バイタルサインは安定しており,腹部造影CTで腹腔内臓器損傷の所見は明らかでなかったが,緊急開腹手術を行った。腹腔内臓器の損傷はなく,脱出腸管はisolation bagに収納して腹腔内へ還納した。症例2は43歳の男性,仲間と口論になり左上腹部を包丁で刺され,救急搬送された。来院時左上腹部には包丁が刺入していたが外出血はなく,バイタルは安定していた。腹部造影CTで包丁は膵実質,横行結腸に近接しており緊急開腹手術を行った。包丁は網囊に刺入していたが胃,横行結腸,膵の間に位置しており臓器損傷はなかった。腹部刺傷は頻度が低いが迅速な判断を求められるため,外科医は手術の適応を含め,その一般的対応を熟知しておかなければならない。

  • 中村 聡, 永吉 絹子, 貞苅 良彦, 藤田 逸人, 真鍋 達也, 中村 雅史
    2017 年 37 巻 5 号 p. 813-817
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は31歳,女性。下腹部痛を主訴に近医で入院加療されていたが,改善しなかったため精査・加療目的に翌日当院へ転院となった。転院時の腹部造影CTで,終末回腸の壁肥厚と周囲脂肪組織混濁を認めた。保存的加療では軽快せず,2日後の腹部造影CTで終末回腸周囲に遊離ガスを伴う液体貯留を認めたため,回腸穿孔による腹腔内膿瘍と診断し同日緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると,骨盤内に混濁した腹水と小腸・子宮・付属器に膿苔の付着を認めた。終末回腸は一塊となり炎症性腫瘤を形成していた。癒着を剥離し回盲部を授動した後に,小開腹創より回盲部を腹腔外に挙上し,一塊となった終末回腸を摘出した。病理組織検査では,腸管壁全層に内膜症病変を認め,穿孔の原因と思われた。腸管子宮内膜症の穿孔例はまれではあるが,基礎疾患のない若年女性の急性腹症では腸管子宮内膜症も鑑別疾患の一つとして考慮し診療を行うべきであると考えられた。

  • 松岡 信成, 藤田 晃司, 菊永 裕行, 三浦 弘志, 熊井 浩一郎
    2017 年 37 巻 5 号 p. 819-822
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/12/05
    ジャーナル フリー

    症例は27歳の男性。腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した。開腹手術を含め特記すべき既往歴なし。来院時,右下腹部に限局性の反跳痛を認め,腹部造影CT検査で造影効果不良の小腸が2ヵ所でclosed loopを形成しており,絞扼性腸閉塞の診断で緊急開腹術を施行した。術中所見では,終末回腸の回腸係蹄同士が互いに巻きついて結節を形成しており,小腸―小腸間の腸管結節形成症と診断した。用手的結節解除は不可能と判断し,結節の口側の腸管を切離したうえで結節を解除し,壊疽回腸120cmを含む回盲部切除術を施行した。術後経過は良好で,術後14日目に退院した。小腸―小腸間の腸管結節形成症は,索状物による絞扼性腸閉塞とは異なる機序により腸閉塞を発症する非常にまれな疾患である。急速に増悪する腸管血流不全のため,腸管切除を要することが多い。

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