2018 年 38 巻 4 号 p. 771-776
症例は80歳男性,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡で上行結腸癌を認めた。待機的に腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行し,術後5日目に3分粥を摂取した後に乳び腹水を生じた。翌日に筋性防御を伴う腹痛が出現し,腹部CTで腸管膜脂肪織濃度の上昇を認め,リンパ漏への感染による腹膜炎と診断し抗生剤加療を開始した。腹痛が出現してから7時間後にショック状態となったため,緊急で腹腔鏡下洗浄・ドレナージ術を施行した。腹腔内には黄白色の膿汁を大量に認めた。術前のドレーン排液培養よりA群溶連菌が検出され,劇症型A群溶連菌感染症(Streptococcal Toxic Shock Syndrome:以下,STSS)と診断した。術後にDICを呈したが,CHDFとPMX-DHPを含む集学的治療が功を奏し軽快退院となった。腹膜炎で発症するSTSSは比較的まれであり,文献的考察を加えて報告する。