2019 年 39 巻 4 号 p. 669-673
虫垂炎に対する腹腔鏡下虫垂切除術が標準アプローチとなり,穿孔性虫垂炎を含む複雑性虫垂炎に対しても腹腔鏡下に適切に対応する必要がある。当科における穿孔性虫垂炎に対する治療成績を検討した。2014年1月から2018年10月の急性虫垂炎に対する虫垂切除術274例を対象とした。①緊急腹腔鏡下虫垂切除術122例中,36例(29.5%)で虫垂穿孔を認め,非穿孔例と比して,手術時間の延長・合併症の増加・在院期間の延長を認めた。②穿孔性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術36例と開腹手術14例の比較では,ドレーン留置は腹腔鏡下手術で少なかったが,合併症や術後在院期間は同等であった。③虫垂穿孔に伴う汚染範囲について,限局汚染22例と広範囲汚染14例の比較では,術後アウトカムへの影響は認めなかった。穿孔性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術は,単純性虫垂炎と比較すると術後合併症に注意を要するが,従来の開腹手術同様に標準術式となりうる。