2019 年 39 巻 4 号 p. 733-737
症例は54歳,男性。前医で遠隔転移を有する胸部中部食道癌と診断され,加療目的に当院紹介となった。放射線化学療法中に腸閉塞で入院となったが,入院2日目に大量下血とともに高度貧血が認められ,腹部造影CT検査から小腸出血と診断された。緊急手術で小腸壁内結節からの出血と診断し,小腸部分切除を行った。病理検査では粘膜から漿膜下層にかけて扁平上皮癌を認め,食道癌の小腸転移と診断した。術後は合併症なく経過し9病日には退院可能となったが原疾患の治療目的に転科され,原病増悪に伴い56病日に在院死となった。食道癌の小腸転移はまれな転移形式である。腸閉塞と消化管穿孔に対する治療報告は多いものの,腫瘍出血に対して治療を要した例は極めてまれである。救命可能な緊急疾患ではあるものの,病態としては終末期であることが多いため,手術適応を十分に検討し,在院死のリスクも含めた説明を行ったうえで治療にあたる必要がある。