2019 年 39 巻 5 号 p. 815-819
2006年12月から2017年12月に当院で治療を受けた外傷性横隔膜損傷8例について検討した。男性6例,女性2例,平均年齢63.0(45~79)歳の患者を対象とした。6例が鈍的外傷で,2例が鋭的外傷であった。5例が受傷当日に診断され,うち4例が緊急手術となり修復を行ったが,1例は全身管理の後に受診後1日後に手術となった。3例は受傷から4~17日後に横隔膜損傷の診断となり手術となった。左側損傷が5例,右側は3例であり,右側3症例のうち2例は術前に横隔膜損傷の診断はできていなかった。手術アプローチ法は,開胸+開腹が3例,開腹のみが4例,開胸のみは1例(胸腔鏡補助下)であった。右側3症例と受傷後17日目の症例はすべて開胸アプローチで修復した。重症度の高い多発外傷では,初期診療から横隔膜損傷の可能性も考慮に入れて治療を行うことが重要であり,とくに右側の損傷は術前診断がつきにくい傾向にある。また,右側損傷および受傷後数日後の症例には胸部からのアプローチが有用と考えられた。