2019 年 39 巻 5 号 p. 839-843
【背景】外傷性膵Ⅲb型損傷の診断と至適術式選択は難しく,短期/長期成績評価が重要である。【目的】外傷性膵Ⅲb型損傷症例に対するERCPによる術前診断と短期/長期成績を評価する。【対象と結果】2007年7月から2018年6月に当科で外傷性膵Ⅲb型損傷に対し外科治療を行った9例。年齢中央値は31歳(8〜77歳)。CTで主膵管損傷を診断し得たのは9例中2例(22%)だが,ERCPでは7例全例で主膵管損傷(完全断裂4例,部分損傷3例)が診断された。膵瘻4例(44%),胆汁瘻1例(11%)。観察期間中央値57ヵ月(5〜80ヵ月)で,PDを施行した8例のうち若年齢を中心に吻合部狭窄(胆管空腸4例(50%),膵空腸2例(25%))を認め,2例(25%)で再手術を要した。【結語】外傷性膵Ⅲb型損傷に対するERCPはより正確な主膵管損傷評価が可能。若年例に晩期合併症を認め,今後の課題である。