2019 年 39 巻 5 号 p. 901-904
症例は80歳,女性。1ヵ月間程度持続する左下腹部痛を主訴に当科紹介受診。来院時,左下腹部に限局性圧痛と筋性防御を認めた。腹部造影CTで横行結腸近傍の大網内に4cm長の線状高吸収領域を伴う5cm大の膿瘍を疑う腫瘤を認めた。下腹部痛が出現する数日前に鮭骨を誤飲した病歴があり,魚骨による消化管穿孔に続発した腹腔内膿瘍と診断し,緊急手術を施行した。単孔式腹腔鏡下に横行結腸に隣接した大網腫瘤を摘除した。腫瘤周囲の横行結腸漿膜に発赤と一部びらんを認めたが明らかな穿孔部位は同定できなかった。病理組織学的所見は大網に高度の好中球浸潤や壊死を認め,膿瘍内に4cm長の魚骨を認めた。魚骨による腹腔内膿瘍は穿孔や穿通部位が不明瞭な場合も散見されるが,術前CTである程度部位の同定が可能であり,近年普及してきている単孔式腹腔鏡手術も治療の選択肢になり得ると考えられた。