日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
下膵十二指腸動脈の断裂を伴った外傷性十二指腸損傷の1例
村田 哲洋清水 貞利甲田 洋一高台 真太郎玉森 豊久保 尚士井上 透前田 清金沢 景繁
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 39 巻 5 号 p. 971-974

詳細
抄録

症例は50歳,男性。鉄パイプが腹部に落下し受傷,当院へ救急搬送された。腹部造影CTで十二指腸水平脚の穿孔と腹腔内出血を認め,下膵十二指腸動脈からのextravasationが確認された。輸液負荷でバイタルサインは安定し血管造影検査を行ったところ,下膵十二指腸動脈の断裂が認められ,術前に経カテーテル動脈塞栓術を施行した。術中所見では腸間膜根部右側に深い損傷があり,十二指腸水平脚の穿孔を認めた。膵頭部領域の動脈出血はコントロールされていた。十二指腸部分切除術と十二指腸・空腸側々吻合術を施行し,術後合併症なく退院した。外傷性十二指腸損傷の死因の大部分は腹部血管損傷合併例が占めるとされ,出血コントロールに難渋することが多い。今回,下膵十二指腸動脈断裂を伴った外傷性十二指腸損傷に対して,術前IVRで動脈出血をコントロールして開腹術を行い,術後合併症なく救命できた1例を経験したので報告する。

著者関連情報
© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
前の記事 次の記事
feedback
Top