今回われわれは主膵管損傷を伴う小児膵体部損傷Ⅲb型(AAST grade Ⅲ)の1例を報告する。症例は10代の男児,自転車事故による受傷4時間後に腹痛を主訴に当院へ来院した。CT検査で膵体部損傷および小腸損傷疑いと診断した。緊急審査腹腔鏡を行い腸管損傷がないことを確認したのちに開腹手術へ移行し,主膵管損傷を伴う膵体部損傷を確認した。脾温存脾動静脈温存尾側膵切除を施行した。軽度膵液瘻を呈したが術後経過は良好であり26日目に退院となった。主膵管損傷を伴う小児膵損傷はまれであり,とくに膵体部における損傷例ではその戦略はいまだに議論が分かれている。症例報告の積み重ねに加えNational databaseを用いた検討を行い,治療方針決定のフローチャートや一定の治療指針が提示されることを期待したい。