2020 年 40 巻 3 号 p. 495-498
症例は18歳,女性。来院前日から右下腹部痛が増悪し受診した。腹膜刺激症状があり,腹部CT検査で回盲部の腸重積と診断し,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると,回腸,盲腸,虫垂が上行結腸に重積しており,Hutchinson手技で整復した。術中所見では,明らかな腫瘍性病変はなく,移動盲腸による腸重積と診断した。原因先進部がなく,腸管虚血所見も認めなかったため,腸管切除は行わず盲腸固定術を行った。その後症状の再燃はなく,大腸内視鏡検査や腹部CT検査で異常所見は認めなかった。術後10ヵ月が経過し,再発はない。成人腸重積は腫瘍などの器質的疾患が原因であることが多く,腸管を切除するのが一般的である。今回われわれは成人腸重積に対して腹腔鏡下に整復し,その原因が移動盲腸と判明したことで,より低侵襲な盲腸固定術で治癒し得た1例を経験したので報告する。