2020 年 40 巻 6 号 p. 751-754
症例は63歳男性。昼食後に突然の心窩部痛を認め近医を受診した。血液検査で異常所見を認めず,腹部CTでも原因が特定できなかったが,経過観察入院となった。しかし心窩部痛と嘔気が徐々に増悪したため,約5時間後に精査加療目的に当院に紹介となった。上腹部が膨満し反跳痛を認めた。腹部CTで小網内に嵌入した小腸と,その腸間膜がWinslow孔に収束する所見を確認した。緊急開腹術を行うと,Winslow孔から回腸が60cm程嵌入し壊死しており,小腸部分切除を行った。なお前医のCTを後方視的に確認すると,わずかだがWinslow孔から小網内に嵌入する小腸が確認できた。本症例はWinslow孔ヘルニアが5時間で大きく増悪したCT所見の経時的変化を確認できた。原因不明の腹痛症例の診断には,Winslow孔ヘルニアも念頭に置き,また短時間で増悪する可能性も踏まえて診療に臨むことが肝要と考える。