2021 年 41 巻 1 号 p. 41-44
症例は69歳女性,下腹部痛で救急外来を受診した。腹部造影CTで,骨盤内に長径86mmの内部に出血を伴う腫瘤性病変が指摘され,精査目的に当科へ紹介された。MRIでは腫瘤は超急性期の血腫が主成分と考えられ,S状結腸を壁外から圧排しているようにみえた。卵巣腫瘍の腫瘍内出血を疑い,入院5日目に婦人科と合同で試験開腹術を施行した。術中所見では婦人科臓器は正常で,多量の血性腹水およびS状結腸の腸間膜側に手拳大の腫瘤を認め,S状結腸部分切除術を施行し腫瘤を摘出した。病理組織学的検査では粘膜病変を認めず,漿膜下層に血腫を認めた。外傷歴や出血性疾患なく,摘出標本内に腫瘍性病変や血管病変を認めなかったことから,特発性S状結腸壁内血腫と診断した。大腸壁内血腫は比較的まれで,その多くが外傷や抗血栓薬内服によるものであり,自験例のような特発性は本邦7報告目である。非常にまれと考えられたので報告する。