2021 年 41 巻 6 号 p. 457-460
症例は88歳,男性。腹痛を主訴に前医を受診した。血液検査でHb 8.7g/dLと貧血を,腹部造影CTで脾臓周囲に造影剤の血管外漏出像を認めたため,治療目的に当院搬送となった。精査の結果,胃軸捻転および脾臓周囲の静脈性出血が疑われた。当院搬送後も出血の持続が疑われ,緊急試験開腹の方針とした。開腹時,腹腔内には多量の血腫が貯留していた。また,胃体部大弯側が左横隔膜下に彎入するとともに幽門が噴門の腹側直上に位置し,胃軸捻転の状態であった。脾臓下極に裂創があり,同部位から出血が持続していた。止血困難であったため脾臓は摘出した。直近の腹部外傷の既往がないことから,胃軸捻転により脾臓が牽引され損傷および出血をきたしたものと考えられた。胃軸捻転に伴う脾臓損傷および腹腔内出血は本邦報告例がなくまれな合併症である。胃軸捻転の特徴的な画像所見を知っておくこと,およびその合併症を念頭に置くことが重要である。