2022 年 42 巻 3 号 p. 403-407
症例は68 歳,男性。出血性胃潰瘍で入院歴があったが,胃酸分泌抑制薬の内服やピロリ菌除菌は拒否されていた。大量吐血し当院へ救急搬送された。来院直後に心肺停止状態に陥ったが,蘇生処置により自己心拍再開が得られ,緊急血管造影を施行した。固有肝動脈に動脈瘤が形成されており,術中に大量の血管外漏出像が確認できた。シアノアクリレート系薬剤(n-butyl-2-cyanoacrylate:NBCA)で動脈瘤と固有肝動脈を塞栓した。以後,再出血は認められず,側副血行路の発達により肝臓内の動脈血流も保たれていたが,胃角部から幽門にかけて変形が強く,経口摂取が不良であった。気腫性膀胱炎,腎盂腎炎,肝膿瘍を発症したが,抗生物質投与とドレナージで軽快した。後日,腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行した。術後経過は良好であり,ピロリ菌除菌は施行できた。固有肝動脈に動脈瘤が形成され,それが胃潰瘍出血の原因となった報告例は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する。