2021 年 36 巻 2 号 p. 150-157
症例は33歳男性.上腹部痛を主訴に前医へ入院となった.血液検査,造影CTで急性膵炎と診断された.血清トリグリセリド(triglyceride:TG)値6,225mg/dlと著明高値であることから,高TG血症が膵炎の成因と考えられた.入院翌日に膵炎の増悪が疑われ,集学的治療目的に当院へ転院となった.同日より膵局所動注療法を開始し,高TG血症に対してLDLアフェレシスを施行した.施行後,血清TG値は479mg/dlまで低下を認めた.臨床症状,血液検査所見は改善傾向となり,第5病日に膵局所動注療法を終了した.膵炎の増悪や合併症は認めず,第21病日に退院となった.高TG血症による急性膵炎に対しては膵炎の標準治療と並行して速やかに血清TG値を低下させることが有用である可能性がある.LDLアフェレシスは脂質のみを選択的に吸着・除去することが可能であり,副作用の発現頻度も少ないため,安全性に優れた有用な治療法と考えられた.