日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
術前診断が困難であった腸閉塞をきたした低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例
金原 真義小野山 裕彦坂井 昇道車 清悟土佐 明誠安次富 駿介大久保 海周平野 博嗣
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2022 年 42 巻 7 号 p. 737-740

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抄録

症例は88歳,女性。発熱,嘔吐,腹痛を主訴に当院を受診。CT所見では,両側肺の浸潤影および小腸全体の腸管拡張像が認められた。腫瘍性病変は同定できなかった。肺炎を合併した腸閉塞症と診断された。腸閉塞に対して第2病日にイレウス管を挿入し,肺炎の治療を行った。肺炎は改善したが,腸閉塞症は保存的治療で軽快しないため閉塞機転は不明だが腸閉塞症に対し第15病日に手術を施行した。開腹すると小腸全体の拡張がみられた。虫垂に囊胞状の腫瘤を認め,その部分から後腹膜に索状物を形成しており,そこに回腸が陥入して絞扼していた。絞扼を解除して回腸部分切除術,虫垂切除術を施行した。虫垂囊腫は1.8cm大であり,病理組織学的検討では低異型度虫垂粘液性腫瘍(LAMN)と診断された。虫垂腫瘍により腸閉塞をきたした報告例は極めて少ない。さらに本症例のように索状物を形成し,それによる腸閉塞をきたした症例は本邦においては他に報告がなく貴重な症例と考えられる。

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© 2022 日本腹部救急医学会
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