2023 年 43 巻 4 号 p. 769-772
症例は92歳男性,右鼠径部の膨隆および硬結,右陰囊からの膿汁流出を主訴に当院を受診した。精査の結果,陰囊膿瘍を伴う右鼠径ヘルニア盲腸嵌頓の診断となった。右鼠径部から陰囊にかけて広範な皮下の炎症性肥厚を認めたが,腹腔内の炎症所見は認めなかったため,腹腔鏡手術を選択した。嵌頓した盲腸は穿孔していたため回盲部切除術を施行した。一方鼠径部は炎症が強く高度に硬化していたため,鼠径ヘルニアの同時修復は困難と判断し一期的修復は行わない方針とした。術後創感染を認め,創部の切開排膿ドレナージを要したが,第16病日に退院した。陰囊膿瘍は術後約3ヵ月で自然治癒した。現在術後6ヵ月経過するも,ヘルニア嵌頓や陰囊膿瘍の再燃は認めていない。陰囊膿瘍を伴う鼠径ヘルニア回盲部嵌頓症例において,鼠径部や陰囊に炎症が限局していれば腹腔鏡アプローチは選択肢として考慮され得ると思われた。