2023 年 43 巻 4 号 p. 781-784
症例は20歳台,男性。ライフル銃を発砲し当院に救急搬送となった。前胸部に銃弾の射入口を,左側腹部に出血を伴う射出口を認めた。CTでは,左第10肋骨骨折,脾臓下極に境界不明瞭な領域を認めた。外傷性脾損傷の診断で緊急手術を施行した。術中所見では脾臓下極に裂傷を認めるも出血量は多くなかったため腹腔鏡下に脾臓を一部切除し,焼灼止血で手術を終了した。術後6日目には射出口部創より便汁漏出あり腸管穿孔と診断し,再手術で下行結腸に穿孔を認め,結腸左半切除術を施行した。術後は創感染を併発したが他に合併症なく経過し,術後4週目に近医へ転院となった。高速で放たれた弾丸はshock waveを生み出し周囲に損傷を与えつつ移動することが知られている。本症例では弾丸によるshock waveとtemporary cavitationにより結腸壁に損傷が生じ,遅発性の腸管穿孔を発症したと考えられた。