2023 年 43 巻 5 号 p. 901-904
非手術治療の適応が拡大しつつある小児外傷診療においても,膵管損傷を伴う高度膵損傷に対する手術治療と非手術治療の適応に関してはいまだ明確な結論が出ていない。当院で治療した日本外傷学会分類Ⅲ型の膵損傷3例について後方視的に非手術治療の妥当性を検討した。年齢は5〜14歳,すべて男児の鈍的外傷による膵単独損傷(Ⅲa型1例,Ⅲb型2例)であった。CT検査は全例に行われ,1例には内視鏡的逆行性膵管造影(endoscopic retrograde pancreatography:以下,ERP),2例にはMR胆管膵管造影(magnetic resonance cholangio pancreatography:MRCP)が行われた。全例で非手術治療が選択され,うち1例にERPによるステント留置,2例に腹水ドレナージが行われた。中心静脈栄養は2例に行われた。少なくとも2例に膵仮性囊胞の形成を認めたがいずれも自然消失し,在院死亡や再入院はなかった。慎重かつ継続的な全身観察を要するが,小児においては膵管損傷を伴う高度膵損傷に対する非手術治療は検討に値する治療戦略であり,今後も症例集積によるさらなる検討が期待される。