2024 年 44 巻 1 号 p. 79-82
症例は76歳,女性。急性発症の呼吸困難,左胸痛で前医を受診した。CT検査で縦隔気腫と左胸水,下部食道壁の断裂を認め,食道破裂が疑われ当科紹介となった。胸腔内穿破型特発性食道破裂の診断で,緊急手術を施行した。手術は腹腔鏡下に開始した。食道裂孔周囲は炎症の影響で剝離が困難であり,用手補助下(hand-assistant laparoscopic surgery:以下,HALS)に,下部食道左壁の破裂部を縫合・閉鎖した。胃底部で被覆,後縦隔をドレナージし,胸腔鏡操作に移行した。胸腔内には多量の食物残渣を認め,胸腔鏡補助下に胸腔内および後縦隔のドレナージを行い,手術を終了した。術後は敗血症を併発し,集中治療を要したが,呼吸器合併症などなく軽快し,術後34日目に転院となった。腹腔鏡・胸腔鏡併用手術(minimally-invasive abdominal and left thoracic approach:MALTA)は局所の炎症が高度な状況でもHALSを用いることで開腹,開胸を回避でき,胸腔穿破型食道破裂に対して,低侵襲な手術が施行できる可能性がある。