2025 年 45 巻 6 号 p. 555-559
近年,正中弓状靭帯圧迫症候群(median arcuate ligament syndrome:以下,MALS)に対する腹腔鏡手術の報告が散見されるが,腹痛の鑑別疾患としての認知度はいまだ十分とはいいがたい。症例は52歳,女性,腹痛の精査として呼気時に撮影した造影CTでMALSの診断に至り,他の器質的疾患が否定的であったため待機的に腹腔鏡手術を実施した。小網を切開して正中弓状靭帯にアプローチし,靭帯切離の目安は腹部大動脈から腹腔動脈の外膜を視認することとした。術後腹部症状は改善し,造影CTで腹腔動脈狭窄の改善を認めた。MALSは消化器外科と血管外科との境界領域の疾患であり重篤な術中合併症として動脈損傷が起こり得るが,手術により症状の改善が期待できるため,安全な手術手技・合併症対策の確立に加え病態自体の周知・啓蒙が必要である。