2025 年 45 巻 6 号 p. 567-569
症例は11歳,女児。発熱,右下腹部痛,嘔吐のため,当院紹介となった。血液検査で炎症反応が軽度高値を示し,CTで骨盤内に腹水を少量認め,虫垂は内腔に糞便貯留を認めるが腫大はわずかであった。腹痛増悪に対して診断目的に審査腹腔鏡を施行したところ,右卵管に3つの小さな有茎性や亜有茎性傍卵巣囊胞を認め,有茎性囊胞,亜有茎性囊胞,卵管采の一部が互いに絡み合って絞扼していた。卵管茎捻転は合併していなかった。絞扼を解除して囊胞を切除した。左卵管にも類似した囊胞が多発しており,焼灼して内容液を吸引除去した。虫垂には炎症はなく,切除しなかった。婦人科疾患による急性腹症として大きな傍卵巣囊胞による卵管茎捻転の報告例は比較的多いが,卵管茎捻転を伴わない,複数の小さな傍卵巣囊胞が互いに絡み合って絞扼した報告例は非常にまれであり,診断および治療に腹腔鏡が有用であったため,報告する。