2025 年 45 巻 6 号 p. 570-572
高度の側弯症・重症心身障碍を有する26歳,男性の癒着性腸閉塞術後の腸重積に対して緊急手術を行った。術後の体位変換を契機に心拍数増加を認め,術後6時間で心室頻拍から心停止へ移行した。蘇生処置を行うも死亡退院となった。急激な貧血の進行を認めたが,体表の診察・ドレーン色調から出血を示唆する所見はなかった。病理解剖で左側腹部に腹壁損傷・腹腔内凝血塊を確認し,左側臥位への体位変換時に変形の強い脊椎による腹壁損傷を生じたと推察された。成人期重症心身障碍児の外科的救急疾患に対する診療は,複雑な背景疾患により健常者と予備能・全身状態が異なることを認識し,予期せぬ偶発症が起こり得ると構えておくが肝要である。