2025 年 45 巻 6 号 p. 582-585
症例は70歳台,男性。膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除,門脈合併切除を施行した。当初門脈再建は端端吻合の予定であったが,再建時に門脈が裂け込み吻合困難となった。長時間の門脈血流遮断による腸管血流うっ滞予防目的で一時的上腸間膜静脈-下大静脈シャントを作成後,右浅大腿静脈グラフトで再建を行った。術後5日目に門脈血栓を認め,13日目にグラフトは完全閉塞したため緊急で血栓除去と門脈再再建を施行した。腹腔内膿瘍などの内科的治療を経て,術後66日目に退院となった。使用報告が少ない浅大腿静脈グラフトを用いた門脈再建,術後早期の門脈血栓症に関し,文献的考察を加え報告する。