2026 年 46 巻 3 号 p. 442-445
外傷性肝損傷のうち尾状葉(Spiegel葉)の損傷はまれで,その解剖学的特性から治療方針に関するエビデンスは乏しい。症例は13歳男児,背部への鈍的外傷受傷後2日目に腹痛を主訴に救急搬送された。来院時,収縮期血圧70mmHg,心拍数120回/分とショックバイタルを呈し,腹部造影CT検査にて尾状葉破裂および腹腔内出血を認め,The American Association for the Surgery of Traumaが規定したliver injury scaleのGrade Ⅲと診断した。非手術療法(non-operative management:以下,NOM)を選択し,活動性出血は確認されず,輸液により循環動態は安定した。入院2日目のCT検査で血腫は網囊内に限局し,症状も改善傾向となり,入院8日目に退院となった。AAST-LIS GradeⅢの小児肝尾状葉損傷で,輸液に反応し血行動態が安定し,造影CTで活動性出血を認めない尾状葉損傷では,厳密なモニタリングによる経過観察と緊急時にIVRおよび手術への移行可能な体制を前提として,NOMが治療選択肢となり得る。