日本腹部救急医学会雑誌
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消化管手術後の出血症例に対する治療方針
平松 昌子菅 敬治住吉 一浩西村 東人谷川 允彦
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2003 年 23 巻 5 号 p. 757-763

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抄録

1996年1月から2002年12月までに行われた消化管悪性腫瘍手術1, 974例のうち28例 (1.4%) に術後出血が認められた. 原疾患では胆道癌・胃癌に多く, 術直後の非感染性出血は他臓器合併切除を伴う胃全摘や直腸切除後に, 縫合不全などの腹腔内感染に起因する出血は活性化膵液の漏出を伴いやすい幽門側胃切除や膵頭十二指腸切除後に多かった. 非感染群は1回のみの出血で予後も比較的良好であるが, 感染群では初回出血は術後14.3±9.8日と後期で, 平均2.4回の出血を繰り返し, 大出血の予兆となるsentinel bleedingを認めることが特徴である. 死亡率は57. 1%と予後不良で, 初回出血時に直ちに治療が行われた6例中5例は止血に成功したのに対し, 出血死亡例8例中5例はsentinel bleedingに対し経過観察が行われていた. 救命率向上のためには, 初回出血時に血管造影や3D-CT Angiographyなどを用いて仮性動脈瘤や新出血の有無を早期に診断し加療することが重要である.

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